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高知大学創立50周年記念 21世紀地域振興学術プロジェクト(平成12〜14年度)
研究課題「魚類標本のデータベース化とバーチャル自然史博物館の設立準備」 成果報告
遠藤広光. 2005. 土佐の魚と分類学 〜魚類標本のデータベース化とバーチャル自然史博物館の設立準備〜.Pp. 80-89. 海洋高知の可能性を探る.高知大学創立50周年記念事業委員会編.高知新聞企業 (2005/07/12)


フタイロサンゴハゼ Gobiodon quinquestrigatus (Valenciennes), BSKU 55049,
2001年7月11日に高知県宿毛市沖の島で採集.全長約3cm.

 海洋生物学研究室では,魚類の分類学を中心とした研究を行っています.これらの研究には標本の蓄積が必要不可欠で,研究室では戦後から収集した推定30万点の標本を所蔵しています.これらは,BSKU(高知大学理学部生物学科の略号)魚類標本コレクションとして,国内外の分類研究者にも広く認知され,学術的に利用されてきました.

 膨大な標本コレクションをより効率的に利用し,維持と管理を行うためには,そのデータ(標本の種名や採集地,採集日など)をコンピュータ化する必要があります.さらに,データベースを公開すれば,その存在をアピールするができます.また,地域に生息する生物の目録(カタログ=種のリスト)を作ることにより,生物多様性の保全活動に役立てることも可能です.標本は,その種がある時点で確かに生息していた証拠となるわけです.生物標本のコレクションは,その地域や国の財産であることはもちろん,今では世界共通の知的財産とみなされています.本学のBSKU魚類標本は国内有数のコレクションであり,そのデータベース化と公開がこのプロジェクトの大きな目的でした.膨大な標本の整理には,多大のマンパワーと時間,標本ビンや保存液などの経費,さらなる保管スペースの確保が必要となります.このプロジェクトですべてを完結させることはできませんが,データベース化のシステムが出来上がり,標本の整理も飛躍的に進みました.現在は,魚類標本の収集や整理を継続して行い,登録済みの約7万点の標本について,データ入力を進めています.この3年間に,日常的には水曜日午後に大学院生が中心となり,研究室学生総出で標本整理作業を行ってきました.この取り組みは,今後も継続していく予定です.

 本21世紀プロジェクトの取り組みは,現在世界的な規模で行われているGIBF (GBIF JAPAN - The Global Biodiversity Information Facility in JAPAN 地球規模生物多様性情報機構)のプロジェクトへの参加という形で発展しつつあります.具体的には,国立科学博物館動物研究科魚類部門が中心となり,日本に所蔵される魚類標本コレクションの統合型データベースの構築が計画されています.まずは,各研究機関に保管されるプライマリータイプ標本(ホロタイプやネオタイプで学名の基準となる唯一の標本)の画像データベース(デジカメ撮影とX線フィルム画像)の構築プロジェクトが現在進行中です.

 自然科学の中でも基礎的な分野である分類学では,標本コレクションの収集,維持や管理を,それぞれの地域や大学付属の自然史系博物館が担っています.また,標本を基にした地域の生物相の研究や教育普及活動も行っています.残念ながら,高知県には動物に関して拠点となる自然史博物館がありません.しかし,本研究室の,魚類に関する調査や研究の成果,標本コレクションなどは,まさに自然史博物館的な情報です.地域の生物に関する情報を持つ研究室や個人は他にも存在しますが,インターネット上に仮想(バーチャル)自然史博物館を作り,散在する情報を総合すれば,ホームページを通して高知の自然についてより多くの知見を得ることが可能です.その第一歩として,高知大学付属バーチャル自然史博物館を企画し,海洋生物学研究室が先陣を切り,大学で行われてきた調査や研究内容の情報発信を開始しました.

 日本の魚類学の祖といわれる田中茂穂博士と本研究室の初代教授の蒲原稔治博士は,共に高知県出身者であり,日本の魚類学の発展に多大の功績を残しました.しかしながら,田中茂穂博士の存在は,高知県が輩出した自然史学者の牧野富太郎博士や寺田寅彦博士に比べると,一般にはほとんど知られていません.また,蒲原稔治博士は戦前戦後を通じて,高知県の魚類相の解明に力を尽くし,本研究室の基礎を築きました.本研究室で蒲原博士が築いた標本や文献の蓄積,魚類分類学の伝統は,前教授の岡村収博士に引き継がれて発展し,現在に至っています.このような魚類分類学の歴史的情報も,本来高知県に自然史博物館があれば,資料として展示されるべきです.田中茂穂博士については,2000年に神奈川県立生命の星地球博物館で企画展が行われ,現在は岡村収博士(高知大学名誉教授)を中心に資料収集が行われています.しかし,残念ながら高知県内には展示場所がありません.そのため,土佐の生んだ魚類学者についてもページを作りましたので,広く一般に知らせることが出来ればと考えています.

 膨大な標本を必要とする自然史学研究は,近年地球の生物多様性の解明や環境保全への関心が高まっているとはいえ,産業界と密接に関わり合う分野と比べると,調査費や標本コレクションの維持管理費を確保することが難しい状況です.その中で,今回高知大学創立50周年記念地域振興学術プロジェクトのひとつとして研究助成を頂いたことに深く感謝致します.また,本研究室の大学院生や学部生,その他多くの方々にご協力を頂いたことにお礼を申し上げます.引き続きよろしくご協力よろしくお願い致します.今後も本プロジェクトで得た資源を有効に活用し,この高知大学バーチャル自然史博物館を発展させるつもりです.

遠藤広光

2003年4月3日

Copyright (C) Laboratory of Marine Biology, Kochi Univ.
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